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(腎性)副甲状腺機能亢進症

(腎性)副甲状腺機能亢進症

 副甲状腺自体に原因があるのではなく、くる病やビタミンD欠乏症、慢性腎不全などが原因で副甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、血液中のカルシウム濃度が必要以上に高くなる病気を二次性(続発性)副甲状腺機能亢進症といいます。
 二次性(続発性)副甲状腺機能亢進症の代表的な原因に、腎性副甲状腺機能亢進症があります。


動画で解説

透析患者様に大切なリンは副甲状腺機能亢進症に関係します。採血結果を聞いた時に
まず、リン(P)の値をチェックするようにしましょう。リン吸着剤は非常に大切な薬の一つです。
ぜひ動画もご覧ください。

病態

 慢性腎不全になると、腎臓でのリン(P)の排泄およびビタミンD3の活性化ができなくなります。また活性化ビタミンD3が低下すると、腸管からのCaの吸収が低下します。
 つまり、慢性腎不全の人は血液中のカルシウム(Ca)が低下し、Pが上昇するわけですが、これらの状態は副甲状腺を刺激し、副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌を促します。そして長期間刺激され続けた副甲状腺は腫大し、やがて血液中Caの値に関係なく PTHが過剰に分泌され、血液中のCa濃度が必要以上に高くなる状態となります。

二次性副甲状腺機能亢進の発生機序


症状

 PTHの過剰な分泌は、骨から血液中へのCa吸収を引き起こし、骨がもろくなる「線維性骨炎」となり、骨痛や骨変形・病的骨折などの原因となります。
 また、血液中のCa濃度が高くなると、さまざまな場所へCa沈着(異所性石灰化)し、動脈硬化弁膜症関節炎などを引き起こします。


検査

 2006年に発表された日本透析医学会の「透析患者における二次性副甲状腺機能亢進症治療ガイドライン」は2012年に改定された「慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の診療ガイドライン」になり、生命予後(命に関係する)因子である血中リン(以下P)濃度の管理を第一に,ガイドラインに基づいた適正な管理を行い,慢性腎臓病(CKD)患者の予後が改善される事への期待を述べたものになりました。

 治療の基本は、まず血清リン濃度が適正値(管理目標値 3.5~6.0mg/dl)にコントロールされていることを最優先し、その後 血清カルシウム濃度を適正値(管理目標値:8.4~10.0mg/dl)※に管理することです。

※アルブミン(Alb)が低い方(血液中アルブミン4.0g/dL未満)は血液中Caを補正する必要があります。

補正Ca値 = 血液中Ca値 +(4-血清アルブミン値)

治療

 つまり、十分な透析リン制限に加えリン吸着薬の使用が必須となり,それにより死亡リスクは改善する。
優先順位としてはリン、カルシウムが管理したうえでPTH(副甲状腺ホルモン)を管理範囲内に調節する。

PTH(intact PTH)の管理目標で60~180pg/mLから60~240pg/mLと上限がかなり上がりました。 当院ではwhole PTH(ホールPTH)を用いているため、35~150pg/mL以下の範囲に管理をすることが望ましいとされております。

ガイドラインでは 下記の表を参考に内服薬の調節をしております。

表に当てはまる薬剤名

  • 炭酸Ca(商品名:カルタンタンカル沈降炭酸カルシウム(粉末) OD錠:口で溶ける)
  • Ca非含有P吸着剤とは “カルシウムを含まないリン吸着薬”のこと。
    1. セベラマー塩酸塩(商品名;フォスブロックレナジェル
    2. 炭酸ランタン(商品名:ホスレノール
    3. ビキサロマー(商品名;キックリン
    4. クエン酸第二鉄(商品名;リオナ:鉄分を有効成分とするリン吸着剤)
  • 活性型ビタミンD製剤(注射:オキサロールロカルトロール、内服薬:ワンアルファアルファロール 注射のほうが内服薬より効果がある)
  • シナカルセト(商品名:レグパラ

PTH高値の場合の活性型ビタミンDとシナカルセットの使い分け上の表に当てはめると

 副甲状腺機能亢進症にならないようにするためには、食事療法リン吸着剤の内服し リンを下げる。また、不足する活性型ビタミンD3を補充することで予防することが大切です。これはPTH抑制効果としては確実ではあるものの、同時に小腸からのカルシウム吸収能も上昇させるため、投与量を増やすと高カルシウム血症を引き起こす危険があり、PTHを抑制するために十分な量を投与できない場合がありました。
 副甲状腺機能抑制薬であるシナカルセト(商品名:レグパラ)が2008年に発売になり副甲状腺機能を抑制すると同時に血清カルシウム濃度を低下させる作用があります。シナカルセトと活性型ビタミンD3との併用法はまだ確立していません。

 しかし、病気が進行してしまったら、超音波検査(エコー)やCT、MRI、MIBIシンチグラムなどで腫大した副甲状腺を検査し、場合によっては経皮的エタノール注入療法(PEIT)手術療法(PTX:副甲状腺そのものを摘出する副甲状腺摘出術)などの治療を行うことが必要となります。
 なお手術では、副甲状腺をすべて摘出し、摘出した副甲状腺の一部を前腕などに移植する方法が一般的です。

参考文献 透析会誌45(4):301-356,2012『慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン』